こちらに、祝子川の沢登り事故を踏まえたうえで導き出せる、沢登りにおけるセルフディフェンス(自己防衛)13ヶ条をまとめました。
🛡️ 沢であなたの命を守るためのセルフディフェンス13ヶ条
― 祝子川事故を、もう繰り返さないために ―
1. ATCガイドを沢で使わない。装備選択は命の選択。
ATCガイドは水圧下でロック解除が困難。沢では基本的に8環などの両方向にロープが流せる器具を使う。
→「器具の選択」が安全文化の成熟度を表す。
2. パートナーの装備と技術を、信じすぎない。確認する。
「大丈夫だろう」は信頼ではなく無関心。
→ 出発前に、装備・支点構築・ビレイ方法を互いに確認しよう。恥ずかしがらない。命のため。
3. “不安”は直感。説明できなくても従っていい。
「なんか嫌だな」と思ったら、それを優先して行動していい。
→ 不安は“察知力”。それを打ち消す文化に染まらないこと。
4. 「2人きりでの遡行」を、必要以上に美談化しない。
祝子川では、二人しかいなかったことが致命的要因だった。
→ 沢登りでは複数人で行く・予備の安全要員を確保する・緊急連絡手段を持つ。
5. 「戻る」判断にリーダーの許可はいらない。
登攀途中で「やめたい」「無理だ」と感じたら、自分の判断で撤退していい。
→ その判断をバカにする人とは、そもそも一緒に行かなくていい。
6. 「パートナーの未熟さ」に目をつぶらない。
相手が明らかに準備不足・体力不足・知識不足なら、情で同行しない。
→ 共に登るとは、互いの命を引き受けること。
7. 「何かあったらどうする?」のシミュレーションを出発前にする。
「ビレイが外れないときは?」「レスキューは?」などを事前に話すことで、空気の支配ではなく情報の共有が主導権を握る。
8. 感情を言語化できる相手としか行かない。
「怖い」「嫌だ」「変だ」と言った時に、逆ギレしたり嘲笑する人は、あなたの命より自尊心を優先する人。
→ 行かない。それがセルフディフェンス。
9. 「現場で判断しよう」は、無責任の合図。
「行けばなんとかなる」と言う人は、事前の備えを軽視している証拠。
→ 沢では「なんとかならないこと」が起きる。事前に決める・話し合う。
10. 「空気を読む」より、「身体感覚を信じる」。
その場のノリ、リーダーの威圧感、他のメンバーの沈黙に飲まれない。
→ 「変だと思った」「危ない気がした」は、あなたの命を守る“感じる力”。
11. 事故後、「事実」と「感情」を両方記録する。
事故に遭った・目撃した・未遂があった場合、何が起きたかだけでなく、そのとき何を感じたかもノートに書く。
→ アレキシサイミア(失感情症)を防ぐ。次に生かす。
12. 「語れなかった人」の分まで、あなたが語っていい。
祝子川で亡くなった女性が「怖い」「嫌だ」と言えなかったとしたら、
→ あなたが「私はこう感じた」と語ることが、次の命を救う文化をつくる。
13. あなたの“違和感”は、誰よりも早く、命の危機を知っている。
それを無かったことにしない。
→ 感じたことを言うことは、“わがまま”でも“甘え”でもない。
それはあなた自身と、まだ知らない誰かの命を守る技術です。
🎯 最後に
沢登りは、美しくも厳しい自然との対話。
あなたの命を守る最大の道具は、「感情」と「判断力」です。
そしてそれは、恐れず語る力によって磨かれます。