7/13/2015

沢の難易度

■沢の難易度

初心者を連れて行くならどこがいいか?という発想で色々と考えています。

「ヤマケイテクニカルブック4:沢登り」によれば、グレードの基準は

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1級(初心者向き)
 岩場でIII級のピッチをリードできる者や、沢に慣れたパーティーはロープ不要の場合が多い。

2級(中級者向き)
 初級者のみでの入谷は控えたい。滝の直登にはロープを要する場合もある。高巻き技術も必要。

3級(中級者向き)
 滝の直登には部分的にIV・V級のピッチも含む。ゴルジュの通過にも高度な技術を要する。

4級(上級者向き)
 沢の中でビバークする長い谷で、高巻き道も不明瞭。遡行技術だけでなく雪渓の対処法など総合的な登山技術も必要。

5級(上級者向き)
 日本の渓谷としては最高ランク。泳ぎ、徒渉、高巻きなどで失敗すれば命取り。年に10パーティーほどが遡行に成功している。

6級(篤志家向き)
 昼なお暗く、井戸の底のようなゴルジュ帯が続く異様な世界。雨が降っても逃げ場はなし。完全遡行パーティーは極めて少ない。

例:
   芦川横沢3級ノーマル 
   四十八滝沢2級マイナス 
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しかし、人を連れて行くとなると、その人の経験は色々で、沢の経験があっても連れて行かれるだけの場合は、登攀力の証拠にはなっても、地図読み力の証拠にはなりません。

同じ1級でも地図読み要素があるところには連れていくのは用心が必要です。

と、あれこれ考え、今まで行ったことがあるルートを、難しい順に並べてみました。

こうなりました。 

≪個人的易しい順ランキング≫
1.ナメラ沢 歩くだけだが滑がコケで非常に滑りやすい 長い
2.金石沢 歩くだけ 滝は見るだけ 簡単に巻ける 短い
3.伝丈沢 ひざ下 濡れたければ濡れれる 短い 
4.ズミ沢 絶対に濡れる 水量が多い沢 短い 
5.本間沢 ずぶぬれ 短い 
6.モロクボ沢  バランスが良い 
7.釜の沢  スメアリング 長い 
8.ヤチキ沢 脆い 危険 
9.海沢  泳ぐ 
10.芦川横沢  スタンス極小

■ もっと分割して考えよう・・

しかし、これは隔絶という要素を考えていないことに気が付いた。

考える要素は

1) 安全圏との隔絶度
2) ルートの登攀要素
3) サイズ
4) 水量
5) 脆さ
6) 下山道の容易さ
7) 事故歴の有無

くらいでしょうか・・・

■1) 安全圏との隔絶度

当然ですが、安全圏と隔絶されていればいるほど、アブナイです。沢で怪我をしても・・・

 ・山小屋があるわけではない
 ・携帯電話が入らない
 ・ヘリのピックアップには尾根まで負傷者を担ぎ上げないといけない
 ・日本では夜間救助はないので、ビバークになることが多い

 というわけで、一般的な岩のゲレンデや毎日ヘリが飛んでいるような、北アなどの縦走路より危ないです。

 遭難した時に迅速な対応をしてもらうためには、隔絶された場所では3人がベター、です。最低限は2人です。

■2) ルートの登攀要素

当然、  登攀要素 大  >  小 
        危険  大  >  小

です。 滝の数や難しさより、残置支点の有無が重要かも。

■3) サイズ

サイズは体力度との関係です。 短いルートの方がより易しい。ただし、これは計画で短くすることができます。

■4) 水量

水量=溺死可能性。 水量が多いほうが溺死の危険が大きい。 釜が深いと、墜ちたら死にます。泳ぐ要素があると、泳げない人には危険です。

しかも、水温も関係します。雪解け水の沢は非常に寒いです。低体温症の恐れがあります。

逆に水量が少ない沢は、ぬめっていて登攀が難しくなりがちです。

■5) 脆さ

脆い沢は、ホールドやフットホールド(スタンス)がすぐ壊れます。これは岩質によります。

脆いと書かれた沢は、雨の日には辞めておきましょう。支えている土壌が緩くなっていた場合、通常は動かないような大岩が、少しの刺激で動いてしまう可能性もあります。

■6) 下山道の容易さ

下山は尾根です。地図読み力が必要で、尾根の下りは、地図読みは難しいのが相場です。

が、人気があるルートは、大抵は、踏み跡があります。また一般登山道を下山道にしているルートは、下山が簡単。

そのルートの経験者がいれば、これは簡単になります。

■7) 事故歴

事故歴があれば、やはり気を付けた方が良いと思います。

■ これらの要素を5段階で採点し評価してみました

行ったことがある沢を試しに採点してみた。

1) 安全圏との隔絶度
2) ルートの登攀要素
3) サイズ
4) 水量
5) 脆さ
6) 下山道の容易さ
7) 事故歴の有無

        1) + 2) + 3) + 4) + 5) + 6) + 7) 
1.ナメラ沢 2    1   4   1    1   3  2 = 14
2.金石沢 4  1  2  1  2  3 0 = 12
3.伝丈沢 4  1  3  2  2  3 0 = 15 
4.ズミ沢  1  3  2  3  1 1 0 = 11
5.本間沢  2 3 3 3 1 2 4 = 18
6.モロクボ沢 2 3 2 3 3 2 4= 19  
7.釜の沢  2 3 4 3 2 1 4 = 19
8.ヤチキ沢 3 4 3 2 4 4 2 = 22
9.海沢 1 2 3 4 2 1 2 = 17 
10.芦川横沢 2 4 2 2 2 3 = 15

と意外な結果になりました。 登攀要素があっても、一番易しいのはズミ沢。芦川横沢より、ヤチキ沢が難しくなるのは、横沢が道路からすぐにあるから・・・。

登攀要素のあるなしだけでは、沢のむずかしさは、計れない、ということですね。

ちなみに、芦川横沢は2級、後はみな1級の易しい沢です。

1級しか登らなくても、隔絶された場所には、リスクはたくさんあると言うことですね。