5/19/2015

沢の学び方

■ 都岳連沢講習

都岳連の沢講習のお知らせが来た。私は残念ながら、もうこの講習が目的とするレベルには自分で到達してしまった・・・。

こうした講習会に出れる人はラッキーだが、出れない人は多い。

それでも沢に行きたいという場合は、自分で、この講習内容をマスターすべく、細かく要素に分けないといけない。

というわけで、この講習のカリキュラムを事例として、考察してみたい。こういうものは、そういう用途に使うものだ。つまり、カリキュラム構成を盗むのだ。



■ 知識の重要さは実技の半分

まず全体像を眺めよう。

机上が6、実技が5だ。 比重は6対5。 初回は顔合わせ程度のことだろうから、除外したとしても、5:5。それだけ、知識、座学の比重が大きいと言うことだ。 登山は山に行く前から登山なのと同じだ。

私は山岳会は非常に良いところだと思っている。が、宿題(座学)をやってくるか来ないかは、非常にばらつきが大きい。

結果として、同じ山行をしても、学んでくる人と来ない人で差がつく。だから、同じ山行数行っても、その実力には違いが大きく出てしまう・・・と思う。

一般に、山行の数を稼げない社会人は一つ一つの体験の濃度を上げる作戦を取るしかない。つまり、一つの事柄から10を学ぶためには、沢の参考書のひとつや二つくらいは、自分で読んできている、というのが大事になる。

■ 勉強会 5回

回数を見てみよう。四ヶ月で12回。つまり、1ヶ月にすると3回。そのうち、実技は1回~2回だ。

一か月にどれだけ沢に休暇が費やせるかで、沢ヤとしての成長スピードは違って当然だ。毎週沢に行けばそれだけ早く沢とお近づきになれるだろう。

座学は、2時間程度の座学だから、講習会に参加できない普通の人は、仲間同士で集まって勉強会とすればよい。勉強会は5回程度は必要で、一回ついて2時間。有志が手ごろな参考書から該当するところをまとめて、皆によんでもらえばよいだろう。

2時間×5回で、約10時間。 それだけの座学が最低限必要と考えられていると言うことだ。

沢は登山と違って装備も違うので、ギアの買い方から教えてもらう方が近道だ。

ギア 沢靴(フェルトか、アクアステルスか、わらじか?)買う時はキツメを買う。
    ウエアは濡れてもすぐ乾くもの
    
防水 濡れないように大型のごみ袋と小さいゴミ袋を駆使。泳ぐような沢でなければ、大抵は厳密に防水しなくても構わない。

■ 山行の計画から読み取る

山行の日というのは、重要な情報を色々含んでいる。

6月は1回。7月は1回、8月、1回。9月1回、10月1回。それぞれの沢に最も適した季節が選んであると予想すべきだ。(たまに違うこともあるからその場合はツッコミを入れる)。

また目的とする学習内容に即した内容の沢が選んであると思って間違いない。

■ 山行の組み方の観察

1)バンガロー泊&葛葉川本谷  一泊が沢泊でなく、バンガローというのは敷居を下げる
                     目的か? この沢は定番だ

2)源次郎沢 & 水無側  沢泊   どのような性質の沢だろうか?
                      沢泊だが、沢泊で挫折するようだと沢適正なしかも

3)水根川 徒渉、へつり、 登攀  やっと登攀要素が出てきて沢”登り”らしくなった 
                       水に対する危険管理は一般登山では出てこない

4)バンガロー泊、小川谷      登攀に加えて、高巻きが出てくると、ミニバイルが
                     欲しいかもしれない

5)東沢釜の沢            釜の沢は初級の沢で、本来1)の人には、釜の沢の前に
                      数ステップ必要だと私は思ったが、やっぱりそういう風に
                      カリキュラムが組んであって、わが意を得たりと思った。

釜の沢は初級の沢とされているがそんなに易しくはない。スラブの登攀(巻けるが)、泊り場の選定、一日では山頂に抜けれない、などがその理由。一通りのロープワークは必要だ。

ちなみに手持ちのルートガイド集によると

 1)葛葉川本谷 1級 3時間、標高差680m

 2)源次郎沢 1級 3時間 標高差750m すべての滝が直登できる 大倉尾根至近 
                              あかるく快適な沢
   水無側   1級上 4-5時間 標高差900m 丹沢で最もメジャーな沢 手あかが付いた沢
                                  沢泊は車で行ける戸沢出合。
                                  河原が駐車場で、焚き火も可。

 3)水根川 1級上 6~6.5時間 標高差 500m ゴルジュ入門、濡れる沢

 4)小川谷廊下 2級 4時間 標高差300m どっぷりと水に浸かる 天候要注意 
                              易しくなったとは言え、初心者もベテランも
                              楽しめる名渓   

 5)東沢釜の沢 1級上 2日(6~7時間) 森林浴とナメ

となっている。暑い季節には濡れる沢、そうでない季節には濡れない沢。ゴルジュ突破は、泳ぎが入るか、水量次第な面もあり、難易度はその時々で大きく違うと思われる。

ルートの性格を見ると、1)~2)までは、だいぶペツルのボルトルートを思わせるルートだ。

その最後に釜の沢が来ているのが印象的だ。例のごとく、ゴールはスタートでしかない。

■ 沢の難易度

沢の難易度は、岩とは著しく違う。

沢のグレードは岩でのRCCグレードと違って点数を積み上げたものではなく、相対的な比較から決められている。

まず誰もが行ったことのある沢を標準としている。つまり、基準を知るためには、これらの沢に行っておかなくてはならない、ということになる。そこからグレードの話が始まるわけだ。

 1級の沢  丹沢・水無川本谷、奥多摩・鷹ノ巣谷
 2級     奥秩父・大常木谷、谷川・ヒツゴー沢、
 3級     奥秩父・東のナメ沢、谷川・湯檜曽川本谷

たとえば、A沢という沢は、何級かと言うと、ヒツゴー沢感覚的に同等と思えれば、2級となる。少し易しいが、水無川より、難しいと考えれば2級下となる。

気をつけねばならないのは、沢のグレードの要素。1日の短い沢と泊りの沢では違うのが当然だ。

滝の困難さで、1級となった沢もあれば、同じ困難さの滝があったとしても、たくさんの滝が延々と続いて、級が上がることもある。丹沢の3級が登れても、上越の1泊の2級の沢が安全に登れるか?というと、また異なる。

難しさの要素が違うからだ。 むずかしさの要素を個別に理解する、ということは、最近の人にとっては弱点だ。

本チャンに一番難しいピッチグレードを自分が超えていれば行けるはずと思うのと同じで、みな登攀グレードしか見ていない。
 
逆に東北の3級の沢、長く入渓者が少ないが、滝はさほど難しくない沢が登れても、滝のむずかしさのために丹沢の2級の沢で苦戦することもあるのだそうだ。

■ 計画は 常に易から難へ

計画は常に

 易から難へ

つなげなければならない。 自分の手ごたえというものが大事だからだ。

とにもかくにも、沢を知るには、誰かどこでもよいからと沢に行くべきだ。初回はどこでもよいわけなので、ツアーが良いと思う。そうしたツアーに参加している間に、沢好きの知り合いができるだろうし、沢の分類や自分の好みの沢も分かってくるだろう。

大事なのは、連れて行く行かれるという関係を拒否することだ、と思う。自分で歩くとしたら、と発送しながら歩くことだ。ついて行くだけではなく。

私の沢経験を振り返ってみると

2014年10月16日   金峰山 伝丈沢・金石沢 癒し系
2014年8月24日     大菩薩 大鹿川ズミ沢 初の自前沢☆
2014年6月25・26日  丹沢 沢継続 金山谷沢、檜洞沢、ユーシン沢 
2014年6月12日      丹沢 モロクボ沢 師匠と
2013年10月12日・13日 奥秩父 笛吹川東沢釜ノ沢東俣 沢登講習会
2013年6月23日      御坂 芦川横沢 沢で岩登りデビュー 先輩に連れて行ってもらった
2012年7月22        奥多摩 海沢 ツアー

初回の海沢はツアーだ。そもそも、沢とはどういう活動なのかを理解する活動。そういう出費を惜しまないのが、大事だと思う。そうでないと、文字通り訳も分からず、沢に出かけてしまう。

翌年、先輩に頼んだら、いきなり2級上の沢。芦川横沢だ。それは調べていたので知ってはいたが、非常に登攀要素が強い沢でびっくり。ほぼ岩デビューと同じだった。何しろ、ピッチグレードⅣだから・・・(汗)。

先輩同行とはいえ、良く行ったもんだと思う。芦川横沢は今振り返ると、本当に過激だった。このころは岩登りもまだ知らず、よく落ちなかったものだ。

次が泊まりの東沢釜の沢で、1級上。このときも体力や泊り技術には問題を感じなかったが、登攀が難しすぎると感じた。後で知ったのは、巻ける所を巻かずに直登したと言うことだ(笑)。たぶん一緒に行った人が登りやだったんだろう(笑)。講師にだって楽しみは必要だ。これは登山学校の講習会スタイルで行ったので安全管理してもらった沢だ。ここまでは自力での情報収集だ。お金を払って情報を買っている。

その後、師匠が二つ沢へ連れて行ってくれた。これらのうち、経験値となったのはモロクボ沢で、増水していたが、歩ける沢だった。水の透明度を見る。後の一泊の沢継続は雨の中、焚火したが、焚火の経験はすでに何度もあり、特に目新しくはなかった。沢の継続というスタイルを覚えた。一か所懸垂で滝を降りたっけ。こういう難所はベテランがいれば、難所ではなくなっているので印象が浅いが、実際自分の力で行くと緊張を強いられるだろうとは予想がつく。


■ 自分の力量にあったルートを選ぶ力をまずつける

その後、これらの5つの経験の結実が、ズミ沢と伝丈沢の継続。場所柄的に、もっとも手あかがついていない場所が伝丈沢と金石沢で、誰でも歩け、自然の美しい場所だった。

私は基本的に自然が好きなので、あまり手あかがついていない、つまり人で混雑していない場所が好みだ。

5つの沢経験を踏まえて、選んだズミ沢は会心の沢山行だった。

自分の力量に合った沢をルートガイドから選んで来れるだけの知恵がついたということだった。

私自身を含め、初心者は、ルートガイドを読んでも、自分に行けるのか?行って良いのか?

その辺の判断から、つかない。もし敗退したら、それより易しい沢に、次は行く。どんどん難易度を下げていけば、かならず敗退にはならない沢があるはずだ。誰だって歩くことはできるはずだからだ。 

自分のスキルで行ける山、いける沢を選べるという判断力がついているのか?いないのか?は、その人が立ててくれる山行計画で分かる。

飛躍のある組み方をしていると、たぶん分かっていないと分かる。

分かっていない場合の特徴をあげると

 ・超人的体力が必要
 ・山行に連続性がない
 ・その山行に必要な技術要素をブレークダウンした時、必要な技術が身に付く前座の山行がない

一言で言うと、”いきなりすごいルート”という特徴がある。なんというか一発逆転型というか、ドーダ型というか・・・。

一例としてあげると(例に挙げられた人には悪いが)、今冬の冬山合宿がある。

当初の計画では、厳冬期テント泊縦走で木曽駒宝剣だった・・・宝剣には、滑落の危険があるのは誰でも知っている・・・なのに重いテントを背負って行くヤドカリスタイルの山行とリスク配慮なし。

その前にその山を無雪期で経験しているか?というとそれもなし。厳冬期の稜線泊・・・かなり”いきなり”感が強い。では、アイゼントレをしているか?というとしておらず、フィックスロープ工作ができるか?というと、それを厳冬期の風にさらされずにやる経験を積める前座となる山行がない。

当会のその前の山行は、アイスクライミングの南沢小滝で、その前に、ステップアップとなっていない。山行が一つ一つバラバラというのはそういう意味だ。前の年の冬山合宿は、槍の中崎尾根でラッセルを愉しむ山。まったくつながっていない。連続性がないとは、そう言う意味である。

つまり易から難への基礎的なルールを外しているのだ。その点に気が付けるかつけないか?は、その人の登山者としての命の長さとかなり相関関係がある。
 
■ 自力山行がその人の力

自分の力で行こう、とすると、10の力があっても8の山にしか行けない。

さらに自分が主催して、誰かを連れて行くとなると、相手の力量にもよるが、その人の力量がまったくの未知数の場合は、10の力があっても、6の山にしか行けない。

自分だけでなく、ついてきてくれる人の安全も考えないといけないからだ。

だから、自分で自分の安全が担保できる”自立したセカンド”つまり、”ケツを歩いてくれる先輩”は、貴重だ。10の力で8の山行に行くことが可能になるからだ。

そうでない相手と行く場合は、10の力があっても 6の場所からがスタートだ。

■ 師匠のアドバイス

・講習会で行くような沢ではなく、 入渓者の少ない沢でいろいろなテクニックを実戦を通じて身につける。
・少し経験を積んでからの他流試合。
・沢は会によって登り方が違うのが面白い。
・ロープの使い方はいろいろ

沢は登山のように一般道がない。連れて行ってもらうと言うよりも、”その道”の先導者が必要な世界。

これは単なるボヤキだが、登山でも、”その道の先導者”が必要だと思うし、それが山岳会の先輩や、ガイドの役目だと思うが、最近のガイドの活動は、”その道の先導者”ではなく、自分は先輩から連れて行ってもらって、タダで身に着けた技術と知識を、人にお金で切り売りし、しかも、できるだけ高く売りつけよう、という活動になってしまっているような気がするのは気のせいだろうか?